相続放棄をするためには、設定された期限までに必要書類を作成し、提出しなければいけません。
しかし、ほとんどの方にとって相続放棄は初めて経験するものであり、必要書類や手続きがわからない…といった悩みを抱えている方も少なくありません。
本記事では、相続放棄を検討している方に向けて、具体的な必要書類や書類を取得できる場所、書類の提出方法などを詳しく解説します。
相続放棄のための必要書類は「被相続人との続柄」によって異なるので、まずは本記事を参考にどんな書類が必要なのかを確かめましょう。
相続放棄の必要書類一覧
「相続放棄」とは、故人の遺産を含む全ての相続権を放棄するための法的手続きを指します。
相続放棄によって、故人の財産だけでなく借金などの負債も含めて一切の相続を放棄することが可能です。
相続放棄の手続きには、被相続人と相続人との関係性に応じた書類が必要になります。
以下では、ケースごとに必要な書類について解説します。
全てのケースで必要な書類
まず初めに、全てのケースで必要となる書類を解説します。
相続放棄をおこなう際は必ず必要になる書類なので、しっかり押さえておきましょう。
相続放棄申述書 | 相続放棄する意思を示す公式文書で、裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。 |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | 被相続人の死亡による住民登録の削除を証明する書類です。 |
申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本 | 相続放棄する人の身分を証明するための書類です。 |
収入印紙(800円) | 手続きの手数料として必要です。 |
郵便切手 | 裁判所からの通知書送付に使用されます。 |
被相続人の配偶者が相続放棄する場合
被相続人の配偶者が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 | 配偶者が相続放棄をおこなう際には、被相続人の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。 |
被相続人の子どもが相続放棄する場合
被相続人の子どもが相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 | 子どもが相続放棄をおこなう際にも、配偶者と同様に被相続人の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。 |
被相続人の孫が相続放棄する場合
被相続人の孫が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被代襲者(被相続人の子)の死亡記載のある戸籍謄本 | 孫が相続放棄をおこなう際には、被代襲者である被相続人の子の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。 |
被相続人の父母が相続放棄する場合
被相続人の父母が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本 | 被相続人の一生を通じた家族関係の変遷を証明するために必要です。 |
被相続人の子・孫が死亡している場合、子・孫の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本 | 相続権の移行を証明するために必要です。 |
被相続人の祖父母が相続放棄する場合
被相続人の祖父母が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本 | 被相続人の親がすでに亡くなっていることを証明するために必要です。 |
被相続人の兄弟姉妹が相続放棄する場合
被相続人の兄弟姉妹が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本 | 被相続人の一生を通じた家族関係の変遷を証明するために必要です。 |
被相続人の子・孫・親・祖父母の死亡記載のある戸籍謄本 | 相続権の移行を証明するために必要です。 |
被相続人の甥姪が相続放棄する場合
被相続人の甥姪が相続放棄をする場合は、以下の書類が追加で必要となります。
被相続人の兄弟姉妹(甥姪の親)の死亡の記載のある戸籍謄本 | 甥姪が相続放棄をおこなう際には、その親である被相続人の兄弟姉妹の死亡を証明する戸籍謄本が必要です。 |
相続放棄に印鑑証明は必要?
相続放棄の手続きをおこなう際には、原則として印鑑証明書は必要ありません。
しかし、遺産分割協議や不動産の相続登記手続きなど、相続人としておこなう手続きには印鑑証明が必要になる場合があるので注意が必要です。
相続放棄とその他の手続きは異なりますので、相続人として遺産分割に参加する場合は印鑑証明が必要になると覚えておきましょう。
相続放棄の必要書類はどこでもらえる?
相続放棄の必要書類は多岐に渡るため、どこで書類を集めればよいのかわからずに悩む方も多いでしょう。
以下では相続放棄をスムーズに進めるために必要な書類の概要と取得できる場所について解説します。
必要書類 | 概要・取得場所 |
相続放棄申述書 | 相続放棄申述書は、相続放棄の意思を正式に表明するための書類です。
この書類は全国の家庭裁判所で提供されており、裁判所の公式ウェブサイトからダウンロードすることも可能です。 申述書には、申述人(相続放棄をする人)の基本情報や相続放棄の理由を記入します。 |
戸籍謄本 | 戸籍謄本は申述人の身分を証明するために必要な書類で、申述人の本籍地の市区町村役場で取得できます。
また、被相続人の死亡を証明するために、被相続人の住民票除票または戸籍附票も必要になるケースがあります。 |
収入印紙 | 収入印紙は、相続放棄の手続きに伴う手数料を支払うために必要です。
郵便局や一部のコンビニエンスストアで購入できるため、比較的容易に取得できる書類です。 |
切手 | 相続放棄手続きの際には、裁判所からの通知書送付のために切手が必要になることがあります。
切手は郵便局やコンビニエンスストアで購入できますが、必要な金額は裁判所によって異なるため、事前に確認が必要です。 |
相続放棄の必要書類を集めるのにかかる期間は?
相続放棄の手続きのために必要な書類を集める期間は、書類の種類や入手方法によって異なります。
戸籍謄本や住民票除票は申請後すぐに発行されることがほとんどですが、郵送を利用する場合は数日かかることを考慮しましょう。
収入印紙や切手は、近隣の郵便局やコンビニエンスストアで購入できるため即日入手可能です。
全体として、必要書類を集めるために必要な日数は数日から1週間程度を見積もっておきましょう。
遠方からの郵送を要する書類がある場合や裁判所の混雑状況によっては、もう少し時間がかかる可能性もあります。
相続放棄の必要書類の収集にかかる費用
相続放棄の手続きに必要な書類を用意するためには、それぞれ費用が発生します。
書類の種類や取得方法によって異なりますが、一般的な総費用は数千円程度です。
以下では、各書類とそれに伴う費用について詳しく解説します。
必要書類 | 取得費用 |
相続放棄申述書 | 無料
家庭裁判所から無料で提供されているほか、裁判所のホームページからも無料でダウンロード可能です。そのため取得には直接的な費用はかかりません。 |
戸籍謄本 | 1通あたり450円前後
申述人の本籍地の市区町村役場で取得でき、取得には1通あたり450円前後の手数料がかかります。 |
収入印紙 | 800円
相続放棄手続きには、一般的に800円の収入印紙が必要となります。郵便局や一部のコンビニエンスストアで購入可能です。 |
切手 | 400~500円
切手の金額は裁判所によって異なりますが、一般的には400円から500円程度の切手が必要です。 |
相続放棄の必要書類を集めるのは大変!まとめて手続きするのがおすすめ
相続放棄に必要な書類には相続放棄申述書・戸籍謄本・収入印紙・切手などがあります。
相続放棄の意思を法的に表明し、申述人の身分を証明するためには必要書類を揃えなければなりません。
しかし、それぞれの書類は異なる場所から入手する必要があり、少額ながら費用もかかります。
仕事などで忙しい方などは書類を収集するために時間と労力がかかるため、以下のように計画的にまとめて収集しておくことをおすすめします。
- 戸籍謄本は一度に複数のコピーを取得しておく
- 収入印紙や切手は必要な分を一度に購入しておく
相続放棄の手続きは、精神的な負担も決して少なくはありません。
できるだけ負担を減らすためにも書類の収集を効率的におこないましょう。
計画的に書類を収集することで手続きのストレスを最小限に抑え、スムーズな相続放棄につながります。
相続放棄の必要書類の提出方法
相続放棄の手続きは、いつおこなってもいいわけではなく明確な期限が定められています。
そのため、手続きは迅速かつ正確におこなうことが重要です。
以下では、相続放棄の必要書類の提出方法として家庭裁判所の窓口への直接提出と郵送の2種類について解説します。
家庭裁判所の窓口にて直接提出する
相続放棄の書類は、家庭裁判所の窓口に直接提出することができます。
直接提出がもっとも早く書類を提出する方法であると同時に、必要に応じて家庭裁判所で質問や確認をおこなえることが利点です。
提出の際には以下の書類を持参しましょう。
- 相続放棄申述書
- 戸籍謄本
- 収入印紙
- その他必要に応じた書類
直接提出は、間違いなく書類を手渡しできるという安心感から選ばれることが多い提出方法です。
郵送で必要書類を提出する
家庭裁判所に提出したくても遠方で足を運べない方や、仕事などで時間が取れない方もいるでしょう。
そのような場合に便利なのが、郵送による提出です。
相続放棄の必要書類を郵送する際には、まず書類を全て揃えたうえで適切に封筒に入れて送付しましょう。
封筒に同封するものとしては、以下のものが挙げられます。
- 相続放棄申述書
- 戸籍謄本
- 収入印紙
- 返信用の切手
郵送を選択した場合、書類が裁判所に到着して処理されるまでに時間がかかることを念頭に置いておく必要があります。
相続放棄の必要書類を提出したあとの流れ
相続放棄の手続きは、必要書類を提出しただけで完了するわけではありません。
書類提出後、家庭裁判所からの応答を待ってからさらに手続きを進める必要があります。
以下では、書類提出から受理通知書の受領まで、書類提出後の一連の流れを詳しく解説します。
①家庭裁判所から相続放棄の照会書が届く
必要書類を家庭裁判所に提出すると、まず家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が届きます。
照会書は、相続放棄の意思が明確であることを確認するためのものです。
照会書には、相続放棄の理由や申述人の状況に関する質問などが記載されているのが一般的です。
②照会書に必要事項を記入して返送する
照会書を受け取ったら、必要事項を正確に記入して指定された期限内に家庭裁判所に返送します。
返送する際には、記入内容に誤りがないよう念入りに確認することはもちろん、必要に応じて追加の説明や文書を添付しましょう。
照会書の返送が完了すると、相続放棄の手続きはさらに進行します。
③相続放棄申述受理通知書が届く
照会書の返送後、家庭裁判所にて提出された書類と照会書の回答を検討し、相続放棄の申述の受理を決定します。
受理された場合は、相続放棄申述受理通知書が申述人に送付されます。
相続放棄申述受理通知書とは相続放棄が法的に認められたことを示す重要な文書です。
今後の手続きにおいても「証拠」となるため、大切に保管しておきましょう。
相続放棄の手続きに関する注意点
相続放棄の手続きには、厳格な期限に加えて特定の条件が設けられています。
期限を過ぎてしまった場合などは、相続放棄を希望しても受理されません。
以下では相続放棄の手続きにおける主要な注意点について解説します。
相続放棄の意思がある場合は、まず何に注意すべきなのかを確認してスムーズに手続きを進められるようにしましょう。
相続放棄には「3カ月」の期限が定められている
相続放棄をおこなう際に忘れてはいけないのが、「3カ月」という期限が存在することです。
ただし、被相続人が亡くなってからではなく、相続の開始を知った日から起算されます。
つまり、被相続人の死亡を知った日から3カ月以内に相続放棄の手続きを開始しなければなりません。
もし3カ月の期限を過ぎてしまった場合は、相続放棄ができなくなってしまうため迅速な行動が求められます。
単純承認が成立した場合は相続放棄できない
相続放棄をおこなうことができないもう一つの状況として挙げられるのが「単純承認」が成立している場合です。
単純承認とは、相続人が故人の財産をある程度承認し、その管理や処分をおこなった状態を指します。
単純承認と見なされるのは、以下のような場合です。
- 被相続人の預貯金を引き出して使った
- 被相続人の不動産を売却した
- 被相続人の不動産の名義変更をおこなった
- 相続放棄をしないまま3カ月が過ぎた
相続放棄の手続きをしないまま3カ月が過ぎた場合も単純承認と見なされますが、特に単純承認の例として多いのは相続人が相続財産を自己のものとして扱ったと解釈される行動です。
相続放棄の手続きが不安なら弁護士への相談がおすすめ
相続放棄は法的手続きであり、簡単にできるものではありません。
多くの人にとっては未知の領域となるのではないでしょうか。そんな状態で適切な判断を下しながら手続きを進めるのは容易ではありません。
そこでおすすめするのが、専門家である弁護士への相談です。
弁護士は、ヒアリングした情報をもとに相続放棄の適切性を判断し、適切な手続きをサポートしてくれます。
以下では、相続放棄を弁護士へ相談するメリットについて解説します。
そもそも相続放棄が適切かどうか判断してくれる
相続放棄は、全ての相続人に適した選択肢ではありません。
場合によっては単純承認や限定承認という他の選択肢が適切な選択肢となる場合もあります。
単純承認 | 被相続人の遺産をプラスマイナスに関係なく全て受け継ぐこと |
限定承認 | プラスになる遺産の範囲内でマイナスの遺産も引き継ぐこと |
弁護士は、まず依頼者の状況を適切に把握したうえで、相続放棄・単純承認・限定承認の中から最適な選択肢を提案してくれます。
必要書類や取得方法などをアドバイスしてくれる
相続放棄の手続きには、複数の書類を揃える必要があり、取得方法もそれぞれ異なります。
弁護士は、必要書類の取得方法や書類作成の際の注意点についてもアドバイスが可能です。
また、必要書類の取得にかかる費用や期間についても具体的な情報を提供してくれるため、手続きに対する不安を軽減することができます。
相続放棄の手続きを一任することもできる
相続放棄の手続きは、手間や時間がかかるだけでなく精神的な負担も少なくありません。
弁護士に依頼することで、手続きの一部または全体を委任できることも覚えておきましょう。
弁護士が代理人として手続きを進めることで、申述人は法的な複雑さや手続きのストレスから解放されて日常生活に集中できます。
さいごに
本記事では、相続放棄にどのような書類が必要なのかわからない方や書類の取得方法がわからない方に向けて、相続放棄に関わる必要書類や取得方法、提出方法などを紹介しました。
相続放棄は、手続きのために明確な期限や条件が決められています。
相続人になったものの相続放棄を希望している場合は、できるだけ迅速に必要な手続きをおこなわなければなりません。
本記事から基本的な情報を得たうえで、法律の専門家である弁護士に相談することで相続放棄をスムーズに進めることができます。
まずは本当に相続放棄が必要なのかどうか知ることからはじめましょう。