相続放棄申述書の書き方|手続きをスムーズに進めるためのポイントも解説

相続放棄

相続放棄の手続きをおこなう際には、「相続放棄申述書」という書類を提出しなければなりません。

書類に不備があると相続放棄は認められないため、申述書の概要や正しい書き方について事前に把握しておくことは重要です。

本記事では、相続放棄申述書の取得方法や各項目の正しい記入方法、提出時に必要になる費用についてなど、知っておきたい情報を分かりやすく解説しています。

相続放棄は、借金のような負債の相続を避けるための重要な手続きです。

失敗を防ぐためにも正しい知識を身につけ、必要に応じて専門家にも相談しながら進めましょう。

  1. 相続放棄申述書とは|提出期限と入手方法
    1. 相続の開始を知ってから3カ月以内に提出
    2. 裁判所のホームページからダウンロードできる
  2. 相続放棄申述書の書き方と記入例
    1. 1.提出先裁判所名・作成年月日・申述人の記名・押印
    2. 2.申述人|戸籍と同じとなるよう正確に記載
    3. 3.法定代理人|申述人が未成年の場合
    4. 4.被相続人|「最後の住所」=住民票除票の住所
    5. 5.申述の趣旨|記入の必要なし
    6. 6.申述の理由|相続の開始を知った日
    7. 7.放棄の理由|正直に書けばOK
    8. 8.相続財産の概略|大体の内容でOK
  3. 相続放棄申述書を記入する際の注意事項
    1. 1.相続放棄申述書の記入は代筆でもOK
    2. 2.申述人が認知症の場合は成年後見人が記入
    3. 3.書き間違えても修正液は使わない
  4. 相続放棄申述書の提出に必要な添付書類
  5. 相続放棄申述書の提出に必要な費用
  6. 相続放棄申述書の提出方法は持参か郵送
    1. 直接持参による提出
    2. 郵送による提出
  7. 相続放棄申述書提出後の流れ
    1. 1.裁判所から届く「照会書」に回答
    2. 2.裁判所から「相続放棄の受理書」が届けば完了
    3. 3.必要に応じて「受理証明書」を取得する
  8. 相続放棄を専門家に依頼したほうがよいケース
    1. 1.相続放棄をできる期限が迫っている場合
    2. 2.忙しくて手続きをする時間が確保できない場合
    3. 3.債権者から督促されて困っている場合
    4. 4.後から多額の借金が判明した場合
  9. さいごに

相続放棄申述書とは|提出期限と入手方法

相続放棄申述書は、故人の財産を一切相続しないという意思を示すための重要な書類です。

正しく手続きができていれば基本的には受理されますが、書類に不備があったり期限内に提出できなかったりすると相続放棄が認められない可能性があります。

以下では、相続放棄申述書に関する基本情報を解説します。

相続の開始を知ってから3カ月以内に提出

相続放棄申述書の提出期限は、相続の開始を知った日から3カ月以内です。

この3カ月間を「熟慮期間」と呼び、期限を過ぎると相続放棄が認められない可能性が高くなります。

なお、「相続の開始を知った日」とは被相続人の死亡を知った日とされ、相続人の状況によっては被相続人の死亡日とは異なるケースもあります。

裁判所のホームページからダウンロードできる

相続放棄申述書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。

以下の手順でダウンロードしましょう。

  1. 裁判所のWebサイトにアクセスする
  2. TOPページの「裁判手続案内」から「申立て等で使う書式」を選択する
  3. 「家事審判の申立書」を選択する
  4. 「相続に関する審判の申立書」から「相続の放棄の申述」を選択する
  5. 書式をダウンロードする

また、相続放棄申述書は全国の家庭裁判所の窓口でも入手可能です。

申述書の書式は成人と未成年者で異なるため、適切なフォームを選びましょう。

相続放棄申述書の書き方と記入例

相続放棄の許可を得るためには、相続放棄申述書の正確な記入と提出が必須です。

相続放棄申述書の書き方には特定のルールがあるため、まずはどんな内容を記載すればいいのか確認しておきましょう。

【参考】
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_souzokuhouki_rei20h.pdf
https://www.asahi.com/ads/sozoku_vs/column/waiver/10/

1.提出先裁判所名・作成年月日・申述人の記名・押印

相続放棄申述書の最初の部分には、提出先の裁判所名・作成年月日・申述人の氏名を記入し、押印します。

この際に記入する裁判所名は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を指します。

なお、申述人の氏名は相続放棄をおこなう相続人本人のものを記入し、認印での押印が可能です。

支部名は不要

提出先の裁判所名を記入する際は、支部名や出張所名を記入する必要はありません。

たとえば記入するのが「東京家庭裁判所」だったケースでは「東京」とだけ記入します。

正確に記入すべき項目が多いため、簡略化できる部分は簡略化し、効率的に申述書を作成しましょう。

2.申述人|戸籍と同じとなるよう正確に記載

申述人の情報は、戸籍謄本と同一の内容で記入します。本籍・住所・氏名・生年月日・職業・被相続人との関係などを正確に記載し、略字の使用は避けましょう。

申述人の正確かつ詳細な情報は、裁判所が相続放棄の申述を適切に処理するために重要です。

特に、被相続人との関係を明確にすることは相続放棄の資格を持つかどうかを判断するうえで必須になるため、抜け漏れが無いように記入します。

3.法定代理人|申述人が未成年の場合

申述人が未成年者であるケースでは、法定代理人の住所・氏名・電話番号などの情報を記入します。

法定代理人は、通常であれば親権者または後見人です。未成年者は、自らの意志で相続放棄をおこなうことはできません。

そのため、法定代理人が代わりに申述書を提出する必要があります。

4.被相続人|「最後の住所」=住民票除票の住所

被相続人の情報として、本籍・最後の住所・氏名・死亡日・死亡当時の職業などを記入します。

ここで記入する「最後の住所」の欄は、住民票の除票や戸籍の附票に記載されている住所と一致させる必要があります。

たとえ被相続人が介護施設や病院で亡くなったケースでも、亡くなる直前の住民票の住所を記載しましょう。

5.申述の趣旨|記入の必要なし

相続放棄申述書にある「申述の趣旨」の部分は、相続放棄の申述が法的な要件を満たすことを保証するためのもので、申述人が相続放棄の意志を持っていることを示す項目です。

通常であればあらかじめ印字されているため、別途記入する必要はありません。

6.申述の理由|相続の開始を知った日

「申述の理由」の欄には、相続の開始を知った日を記入します。

相続の開始を知った日とは、被相続人の死亡を知った日もしくは自分自身の相続人としての地位を知った日を指します。

相続放棄の手続きは、ここに記載した日から3カ月以内におこなわなければなりません。

不正確な情報を記載した場合、相続放棄の申述が無効になる可能性があるため正確な日付を記入しましょう。

7.放棄の理由|正直に書けばOK

相続放棄の理由については該当する項目に丸をつけ、必要に応じて「その他」の欄に理由を簡潔に記入します。

放棄の理由として記入する内容は、相続放棄の受理・不受理には影響しません。

申述人が相続放棄を決定した正確な動機や背景を裁判所に伝えるためにも、正直に記載するようにしましょう。

また、放棄の理由は申述人が自身の意志に基づいて相続放棄をおこなっていることを示すためにも重要です。

8.相続財産の概略|大体の内容でOK

「相続財産の概略」の欄には、被相続人の資産や負債の大まかな内訳を記入します。

具体的な金額や不動産の大きさなどは不明であることが多いため、申述書に記載するのは大まかな内容で問題ありません。

もし不明な財産がある場合は、「不明」と記入することも可能です。

相続財産の概略を提供することで、裁判所は相続放棄の申述が債務超過やその他の合理的な理由に基づいているかどうかを判断できます。

たとえば、被相続人が多額の負債を抱えていたケースなどは、相続放棄は申述人にとって合理的な選択となる可能性があります。

相続放棄申述書を記入する際の注意事項

相続放棄申述書に正確な内容を記入することは、相続放棄が認められるかどうかに直結するため細心の注意が必要です。

以下では、相続放棄申述書を記入する際の重要な注意点について解説します。

1.相続放棄申述書の記入は代筆でもOK

相続放棄申述書の記入は申述人本人がおこなう必要はなく、代筆やパソコン入力も可能です。

ただし、申述人の署名と押印は必要になるため注意しましょう。代筆を利用する場合でも、申述人が内容を理解し、同意していることが重要です。

代筆者が記入する際も、申述人の意向を正確に反映させましょう。

2.申述人が認知症の場合は成年後見人が記入

申述人が認知症などで判断能力に問題があるときは、成年後見人が申述書を記入することができます。

この場合、成年後見人は申述人の法的な代理人として行動し、申述人の利益を最大限に考慮したうえで書類を作成しなければなりません。

成年後見人が記入する際は、その旨を明記し、成年後見人としての資格を証明する書類を添付することが求められます。

3.書き間違えても修正液は使わない

相続放棄申述書に記載した内容に誤りがあった場合でも、修正液や修正テープを使用するのは避けましょう。

修正液や修正テープを使用すると、書類が改ざんされたと見なされる可能性があり、相続放棄の申述が受理されないリスクが高まります。

誤記入があった場合は、二重線で訂正し、その横に正しい情報を記入して、訂正箇所には訂正印を押印しましょう。

相続放棄申述書の提出に必要な添付書類

相続放棄をスムーズに進めるためには、申述人の状況に応じた必要書類を正確に揃えることが求められます。

以下では、相続放棄申述書提出時に必要な添付書類について説明します。

共通
✔︎被相続人の住民票除票または戸籍附票

✔︎申述人の戸籍謄本

被相続人との関係 必要書類
配偶者 ✔︎被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
子どもや孫など直系卑属 ✔︎被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

親や祖父母など直系尊属 ✔︎被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎被相続人の子及びその代襲者で死亡している方がいる場合、その子及びその代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎被相続人の直系尊属に死亡している方がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

兄弟姉妹 ✔︎被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

✔︎申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続放棄申述書の提出に際しては、被相続人との関係をふまえて必要書類を用意し、申述書とともに提出することが重要です。

不明点がある場合などは専門家を頼って、誤りがないように気をつけましょう。

相続放棄申述書の提出に必要な費用

相続放棄申述書の提出時には、特定の費用が必要になります。以下では、相続放棄申述書の提出に必要な費用と概要を解説します。

費用 概要
収入印紙代 申述書に添付するために、申述人1人につき800円分の収入印紙が必要です。この印紙は、申述書を提出する際に裁判所に納付します。
郵便切手代 申述書の提出には、連絡用の郵便切手も必要になる場合があります。この切手の金額は、申述先の家庭裁判所によって異なるため、事前に裁判所に確認しましょう。

上記の費用は、相続放棄の手続きを正式におこなうために不可欠です。

相続放棄申述書を提出する際は、収入印紙代と郵便切手代を準備しておきましょう。

相続放棄申述書の提出方法は持参か郵送

相続放棄申述書の提出方法には、「直接持参」と「郵送」という2種類の選択肢があります。

以下では、申述書の提出方法の特徴と注意点を解説します。

直接持参による提出

相続放棄申述書を裁判所の窓口に直接持参する方法を選択すると、担当者による即時のフィードバックを得られるという利点があります。

もし書類に記入漏れや単純な書き間違いがあってもその場で指摘されるため、すぐに訂正することが可能です。

書類作成に自信がない方や、手続きの進行に不安がある方は直接持参を選択しましょう。

なお、直接提出する際の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

郵送による提出

相続放棄申述書の提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。

申述人が遠方に住んでいたり裁判所に直接行く時間がなかったりする場合は、郵送を利用しましょう。

もちろん、作成した書類に誤りがなく申述期限に余裕があるケースでも郵送を選択して問題ありません。

ただし、郵送後に書類の不備がわかると手続きが遅れるリスクがあるため、書類を丁寧に確認し、必要な書類がすべて揃っていることを確認しましょう。

また、郵送の際は書類が裁判所に到着することを確実にするために、追跡可能な郵便サービスを利用することをおすすめします。

相続放棄申述書提出後の流れ

相続放棄申述書の提出が完了すると、家庭裁判所による審理が開始されます。

相続放棄が正式に認められるまでの重要な手続きになるため、申述書提出後の一連の流れについて把握しておきましょう。

1.裁判所から届く「照会書」に回答

相続放棄申述書を提出してから1~2週間後に、家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が届きます。

この照会書は相続放棄が本人の真意に基づくものか、法定単純承認事由が存在しないかを確認するためのものです。

申述人は、この照会書に対して回答書を作成し、返送する必要があります。

回答内容が不適切だと相続放棄が認められない恐れもあるため、回答書は慎重に作成しましょう。

2.裁判所から「相続放棄の受理書」が届けば完了

相続放棄が無事に認められると、家庭裁判所から「相続放棄の受理書」が送られてきます。

この受理書は、正式に相続放棄が認められたことを証明する重要な書類です。受理書が届いた時点で、相続放棄の手続きは完了となります。

3.必要に応じて「受理証明書」を取得する

場合によっては、家庭裁判所に「相続放棄の受理証明書」を申請する必要があります。

たとえば、債権者への対応や不動産の名義変更、預貯金の払い戻しといった相続手続きにおいて受理証明書が必要になることがあります。

なお、受理証明書は相続放棄者が請求する必要はなく、他の相続人が登記申請などをおこなう際に請求できるため、必要に応じて取得しましょう。

相続放棄を専門家に依頼したほうがよいケース

相続放棄の手続きは複雑であり、特定の状況では専門家のサポートが不可欠です。

以下では、司法書士や弁護士のような専門家に相続放棄の手続きを依頼すべきケースについて説明します。

1.相続放棄をできる期限が迫っている場合

相続放棄は、相続の開始を知った日から3カ月以内におこなわなければなりません。

たとえば期限まで1カ月を切っているケースなどは、書類の準備や手続きを自分でおこなっていると期限を過ぎる恐れがあります。

期限内に必要な手続きを終えるためにも、専門家に依頼することが推奨されます。

2.忙しくて手続きをする時間が確保できない場合

日常の忙しさから、相続放棄の手続きに必要な時間を確保できないケースでも専門家に依頼することが有効です。

司法書士や弁護士は、必要書類の収集から申立てまでを代行し、手続きの負担を軽減してくれます。

3.債権者から督促されて困っている場合

故人が残した借金に関して債権者からの督促を受けているケースでは、自分で対応せず専門家に相談することが重要です。

専門家は、相続放棄の手続きを適切に進めるとともに債権者との交渉もサポートできるため、適切な対応が可能です。

4.後から多額の借金が判明した場合

相続の開始後に故人による多額の借金が判明した場合、自分で対応せずにまずは専門家へ相談することをおすすめします。

専門家は、相続放棄の可否を判断したうえで必要な手続きを迅速におこなえます。

さいごに

本記事では、相続放棄申述書の正しい書き方をはじめ、実際の記入例や手続きのポイントについて詳しく解説しました。

相続放棄は故人による負の遺産を引き継がないための法的手段であり、申述書の正確な記入が重要です。

相続放棄の手続きは自分自身でもおこなえますが、内容に誤りがあると相続放棄が認められないおそれもあります。

相続放棄を確実にするためにも、司法書士や弁護士といった法律の専門家に相談しながら手続きを進めましょう。

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