相続の問題が発生するのは突然であることが多く、何から手をつけるべきなのか悩む方も少なくありません。
初めて相続を経験する方の中には、相続について誰かに相談したいという人も多いでしょう。
しかし、一口に「相続」といっても、その内容は相続手続きから税金、登記に関することまで多岐にわたり、相談できる公的機関や専門家もそれぞれ異なります。
本記事では、相続におけるさまざまな状況に応じた相談先を解説し、公的機関や専門家がどのようなサポートを提供できるのか、またどのような状況で専門家に相談すべきかを具体的に解説します。
相続に関する疑問や問題に直面した際に、最適な相談先を見つけるための参考として活用してください。
相続の相談先は公的機関・専門家・銀行の3種類
一般的に、相続に関する相談先は公的機関・専門家・銀行の3種類に大別されます。
相続に関するお悩みや必要なサポート内容は1件ごとに異なるため、まずは相談先の特性を理解することが重要です。
公的機関では基本的な情報提供が受けられるほか、専門家からは具体的なアドバイスや手続きの代行が、銀行では資産運用や専門家の紹介が受けられます。
公的機関|相続に関する基本的な内容を相談できる
相続に関する相談に対応できる公的機関としては、市役所・区役所・税務署・国税局などが挙げられます。
公的機関が提供しているのは、相続手続きの基本的な流れや相続税に関する基本的な情報です。
無料相談会などが開催されることもあり、初歩的な疑問や手続きの方法について知りたいときには気軽に相談できる点がメリットです。
ただし、手続きの代行をはじめとした具体的な対応はできないため、専門家に相談したほうが手続きはスムーズに進むでしょう。
専門家|具体的なアドバイスや手続きの代行も依頼できる
相続に関する専門家として挙げられるのは、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などです。
専門家は、相続に関する具体的なアドバイスをはじめ手続きの代行まで対応可能です。
たとえば、弁護士は相続紛争の解決、司法書士は不動産の相続登記、税理士は相続税申告など、それぞれの専門分野に応じたサービスを提供しています。
専門家はそれぞれの専門分野に特化した知識を持っているため、複雑な相続問題や法的な手続きにも対応可能です。
個別の事情に合わせたアドバイスや支援が得られることが、専門家を選ぶ大きなメリットだといえるでしょう。
銀行|資産運用の相談や専門家の紹介が受けられる
銀行では、被相続人の預金や口座に関する相談、資産運用に関するアドバイスが受けられます。
また、銀行によっては相続に関連する専門家の紹介サービスが受けられる場合もあります。
被相続人の預金口座に関する手続きや相続した資産の運用に関することは、相続人にとっては悩ましい問題です。
銀行は、資産状況の把握や資産運用計画の提案に大きな強みを持っているため、資産に関することなら銀行が適切な相談先といえるでしょう。
相続手続きの相談をするなら市役所・区役所
市役所・区役所は、相続手続きに関する相談窓口の選択肢のひとつです。
市役所・区役所のような公的機関では、相続に関する基本的な情報提供や手続きの流れなどが相談できます。
以下では、市役所・区役所で相続に関する相談をした場合のメリット・デメリットと、相談時の費用について解説します。
市役所・区役所で相続の相談をするメリット・デメリット
相続について市役所や区役所に相談するメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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大きなメリットとして、近隣の市役所・区役所で相談ができるため、気軽に利用しやすい点が挙げられます。
専門家に相談するほどでもないけど手続きが心配という方は利用してみるとよいでしょう。
市役所・区役所で相続の相談をする際の費用
市役所・区役所のような公的機関の場合、相続に関する相談に費用はかかりません。
ただし、相談には事前の予約が必要な場合が多く、予約が取りにくい可能性もあります。
また、相談時間が明確に決められているため、ムダな時間をなくすためにも事前に相談内容を整理しておくことが重要です。
相談に関しては対応してもらえても、具体的な手続きの代行はできないことを把握しておきましょう。
たとえば複雑な相続問題や法的なアドバイスが必要な場合は、最初から専門家に相談したほうがスムーズなケースもあります。
相続税の相談をするなら税務署・国税局
相続税の計算方法や申告手続きに関する情報などは、必要に迫られて調べる方がほとんどです。
そんな方にとって、税務署・国税局は相続税に関する適切な相談先といえるでしょう。
以下では、税務署・国税局で相続に関する相続をする場合のメリット・デメリットと、相談時の費用について詳しく解説します。
税務署・国税局で相続の相談をするメリット・デメリット
税務署・国税局で相続の相談をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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税務署や国税局に相談する最大のメリットは、複雑な税関連の手続きについて正確に教えてもらえることでしょう。
相続税の申告手続きの方法や申告期限については、税理士などの専門家に相談せずに済む場合も多いので、基本的な税知識について相談したい方は、利用してみるとよいでしょう。
【参考】税についての相談窓口|国税庁
税務署・国税局で相続の相談をする際の費用
税務署・国税局は公的機関であるため、相続に関する相談には基本的に無料で対応してもらえます。
ただし、相続に関する相談は希望者が多いこともあり事前の予約が必要な場合が多く、予約が取りにくいことも珍しくはありません。
また、相談時間は明確に決められており、時間外の相談には基本的に対応していません。
ムダを省くためにも事前に相談内容を整理しておくことをおすすめします。
税務署・国税局では相続税に関する相談はできるものの、手続きの代行など実務的な対応はできません。
複雑な相続問題や法的なアドバイスが必要な場合は、専門家への相談を検討しましょう。
相続財産の運用や預金口座の相談をするなら銀行
相続財産の運用や預金口座に関する相談を希望している場合、適切な相談先といえるのは銀行です。
銀行では、被相続人の預金や口座に関する相談、資産運用に関するアドバイスが受けられます。
以下では、銀行で相続に関する相談をした場合のメリット・デメリットと、相談時の費用について詳しく解説します。
銀行で相続の相談をするメリット・デメリット
銀行で相続の相談をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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銀行での相続相談では、被相続人の預金口座の凍結手続きなど、お金周りの手続きについて相談ができます。
また、専門家と連携して手続きを代行してもらえるケースも多いので、相続手続きをまるっとお任せしたいという場合には、相談してみるのも手でしょう。
ただし、銀行経由で相続手続きを依頼した場合、個別に専門家に依頼するよりも費用が高額になるケースもあるので注意してください。
銀行で相続の相談をする際の費用
銀行での相続に関する相談は、基本的に無料です。
ただし、銀行で提供している資産運用サービスなど特定のサービスを利用する場合には、追加費用が発生することがあります。
また、相談内容によっては銀行では対応できず専門家への紹介が必要になる可能性があります。
専門家に相談することになった場合は、別途費用が発生することも考慮しておきましょう。
相続トラブルの相談・問題解決を依頼するなら弁護士
相続に関する複雑な問題やトラブルが発生した場合に頼りになるのが、法律に関する専門家である弁護士です。
弁護士は専門知識と経験を活かし、法的な側面から適切なアドバイスや解決策を提供してくれます。
相続人間の紛争や遺産分割、遺言の有効性など、多くの方が悩む法的な相続問題に対しては弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリット
弁護士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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相続について弁護士に相談する最大のメリットは、相続トラブルに関してのアドバイスをもらえることでしょう。
また、正式に依頼をすることで、相続トラブルの解決のための交渉や訴訟にも対応してもらうことができます。
弁護士の中には、司法書士や行政書士などの他士業と連携しているところもあるので、どの専門家に相談すべきかわからないというケースでも、弁護士に相談することで適切な相談先を紹介してもらえることもあります。
【関連記事】遺産相続を弁護士に無料相談できる窓口|探し方・相談時の注意点を解説
弁護士に相続の相談・依頼をする際の費用
公的機関とは異なり、弁護士に相続の相談や依頼をする際には費用がかかります。
ただし、費用は事務所や案件によって異なるため事前に確認しましょう。一般的な弁護士への相談・依頼費用は以下のとおりです。
初回相談料 | 無料もしくは数千円 |
着手金 | 数万円~数百万円 |
成功報酬 | 案件の規模や成果次第 |
初回の相談料は比較的安価なので、まずは簡単な相談をしたうえで契約を検討しましょう。
具体的な費用は弁護士事務所によって変動するため、事務所に直接確認されることをおすすめします。
【関連記事】相続の弁護士費用はいくら?手続きごとの相場・安く抑える方法を解説
不動産の相続に関する相談・相続登記を依頼するなら司法書士
司法書士は、不動産の相続に関する相談や相続登記の依頼に強い専門家です。
不動産の相続登記をはじめとする不動産関連の手続きは相続人の多くが頭を悩ませる問題ですが、司法書士なら専門的な知識で的確なアドバイスが可能です。
以下では、司法書士に相続に関する相談や手続きの依頼をする場合のメリット・デメリットと費用について解説します。
司法書士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリット
司法書士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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相続について司法書士に相談するメリットは、相続登記について適切なアドバイスを受けられる点です。
専門家の中で、相続登記に対応できるのは司法書士だけなので、遺産に不動産が含まれる場合は、一度司法書士へ相談してみるとよいでしょう。
司法書士に相続の相談・依頼をする際の費用
司法書士に相続に関する相談や依頼をする際は、費用がかかります。一般的には、相続登記の手続きに関する費用は下記が相場です。
相談料 | 無料もしくは数千円 |
相続登記 | 数万円~数十万円 |
相談自体は安価に対応してもらえますが、登記などに関する必要費用は事務所や案件によって異なるため事前に確認しましょう。
相続手続きの必要書類の相談・書類作成を依頼するなら行政書士
行政書士は、相続手続きにおける必要書類の相談や書類作成に特化した専門家です。
相続に関連する各種書類の作成や手続きのサポートを専門としており、相続手続きをスムーズに進めるための強い味方になります。
以下では、行政書士に相続に関する相談や依頼をする場合のメリット・デメリットと費用について解説します。
行政書士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリット
行政書士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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行政書士は、ほかの専門家に比べると相続に関してできることはあまり多くありません。
しかし、その分費用を抑えてサポートを受けられるのがメリットです。
書類作成だけ手伝ってほしいなど、サポートしてほしいことが決まっているなら、行政書士へ相談してみましょう。
行政書士に相続の相談・依頼をする際の費用
行政書士に相続に関する相談や依頼をする際には、事務所ごとに決められた費用がかかります。
一般的には、相続登記の手続きに関する費用は下記が相場です。
相談料 | 無料もしくは数千円 |
書類作成・手続きのサポート | 数万円~数十万円 |
費用には行政書士に支払う手数料のほか、印紙代などの法定費用が含まれます。
なお、詳細な費用は事務所や案件によって異なるため事前に確認しましょう。
相続税の相談・申告手続きを依頼するなら税理士
相続税をはじめとした税務問題に個人で対応するのは困難です。
そんなときにサポートしてくれる専門家が、相続税や申告手続きに関する専門知識を持った税理士です。
以下では、税理士に相続に関する相談・依頼をする際のメリット・デメリットと費用について解説します。
税理士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリット
税理士に相続の相談・依頼をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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相続税に関して具体的なサポートを受けたい場合は、税理士に相談しましょう。
たとえば、相続税はいくらかかるのかや、不動産の評価額がわからないといったケースでは、税理士のサポートなしで手続きするのは難しい場合があります。
相続税の申告手続きには期限があり、期限を過ぎるとペナルティを受ける可能性もあります。
相続税に関する手続きに不安がある方は、税理士に相談してみるのがおすすめです。
税理士に相続の相談・依頼をする際の費用
税理士に相続の相談や依頼をする際の費用は、依頼する業務の内容や事務所によって異なります。
一般的には、相続税申告手続きに関する費用は下記が相場です。
相談料 | 無料もしくは数千円 |
相続税申告手続きのサポート | 数万円~数十万円 |
相談内容や税理士事務所によっても費用は異なりますので、依頼前に事務所に直接確認することが重要です。
専門家に相続の相談をする際の選び方
相続は複雑かつ専門的な知識が必要な分野であり、個人で対応するのは限界があります。
しかし、相続に関する専門家にもさまざまな種類があり、適切なサポートを受けるためには専門家を選択するだけの知識が必要です。
以下では、専門家を選ぶためのポイントを解説しています。
ポイントをふまえて専門家を選ぶことで、相続に関する問題を効果的に解決することができるでしょう。
相続分野に注力しているか
一口に「相続」といっても、遺産分割に関することや相続税に関することなど、分野はさまざまです。
専門家を選ぶのであれば、その専門家が相続分野に注力した知識や実績を持っているかどうかを確認しましょう。
相続は、法律はもちろん税務など多岐にわたる知識が必要になります。
相続に特化した専門家であれば、遺産分割・遺言書の作成・相続税申告・相続税など、さまざまな問題に対して的確なアドバイスやサポートが可能です。
料金体系は明確か
料金体系は、サポート内容だけでなく専門家の事務所によっても異なります。
しかし、事務所によっては料金体系が明確でなく、依頼する段階になってはじめて知らされることもあるようです。
事務所のWebサイトなどを事前に確認し、相談料や手続きの費用が明確にされているかどうかを確認することで、予期しない費用の発生を防げます。
明確な料金体系は、トラブルを防ぐだけでなく依頼者と専門家が信頼関係を築くうえでも重要です。
対応はスピーディか
相続に関する問題は急に発生することも多く、場合によっては迅速な対応が必要になる場合もあります。
専門家を選ぶ際には、対応の的確さに加えてスピーディであることも重要なポイントになるでしょう。
相談者に時間がない場合でもすぐに対応できるスピードやフットワークの軽さは、相続をスムーズに進めるために不可欠です。
相続問題が複雑化する前に必要な手続きを済ませることにもつながるはずです。
さいごに|相続の相談先・依頼先は相談内容に応じて使い分けよう
本記事では、相続の際に選ぶべき相談先について解説してきました。
相続に関することは、手続きや税金など多岐にわたります。
個人で対応しようとすると思わぬトラブルにつながる可能性もあるため、スムーズに進めるためには専門家によるサポートが必須です。
ただし、専門家によって得意分野が異なることも忘れてはいけません。
専門家を選ぶ際には相続に関するどんな内容を相談したいのかを明確にして、相談先や依頼先を使い分けることが重要です。