相続が発生したときには、相続財産調査や相続人調査、遺産分割協議書の作成など相続問題解決に向けたさまざまな手続きが必要になります。
とくに相続財産や相続人が多く、相続人間でトラブルになると思われるケースでは、弁護士に手続きを依頼するとスムーズです。
とはいえ「弁護士は敷居が高い」「高額になるのでは」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、遺産分割手続を含む相続でかかる弁護士費用の相場を解説します。
相続手続きにかかる弁護士費用を抑える方法や、依頼に際して確認すべきポイントなどもあわせて紹介します。
- 相続でかかる弁護士費用の内訳と相場
- 【手続き別】相続でかかる弁護士費用の相場
- 相続で弁護士費用が高額になりやすいケース
- 相続で弁護士費用を支払うのは依頼者本人
- 相続でかかる弁護士費用を安く抑える方法
- 相続で弁護士費用が支払えない場合の対処法
- 相続で弁護士に依頼する際に確認すべきポイント
- 相続でかかる弁護士費用の内訳と相場
- 【手続き別】相続でかかる弁護士費用の相場
- 相続で弁護士費用が高額になりやすいケース
- 相続で弁護士費用を支払うのは依頼者本人
- 相続でかかる弁護士費用を安く抑える方法
- 相続で弁護士費用が支払えない場合の対処法
- 相続で弁護士に依頼する際に確認すべきポイント
- さいごに|相続での弁護士費用が不安な方は無料相談がおすすめ
- さいごに|相続での弁護士費用が不安な方は無料相談がおすすめ
相続でかかる弁護士費用の内訳と相場
弁護士費用は2004年4月1日に自由化されたため、基本的に個々の弁護士が自由に決められることになっています。
しかし、それまで日本弁護士連合会が定めていた報酬基準(以降:旧報酬基準)を参考に報酬を設定している弁護士が多いようです。
そのため今回は、旧報酬基準をもとに、相続弁護士費用の内訳と具体的な相場を紹介します。
相談料:30分ごとに5,000円程度
相談料とは、遺産相続について弁護士に相談する際にかかる費用です。
30分につき5,000円程度が相場で、相談した時間に応じて支払います。
初回は無料とする事務所も多いので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
着手金:20万円~
着手金とは、実際に弁護士と契約し、事案に着手してもらうときに支払う費用です。
着手金は一度払うと、事案が希望どおりに解決した・しないにかかわらず、返金はされません。
また着手金には「報酬金の内金」の意味合いはないため、報酬金に充当されることもありません。
相続問題においての着手金は、「経済的利益」の額に応じて決まるのが一般的です。
経済的利益とは、弁護士に依頼することで得られる依頼人の利益を指します。
たとえば遺産分割トラブルの解決を弁護士に依頼した結果、合計で1,000万円の遺産を得られると見込む場合、「1,000万円=経済的利益」とされるのが一般的です。
そしてその1,000万円に対し、あらかじめ取り決めた割合に応じた額を着手金として支払います。
ただし、分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額で計算するのが通常です。
旧報酬基準における経済的利益に対する着手金の割合は、以下のとおりです。
経済的利益の額 |
着手金(税抜) |
300万円以下 |
経済的利益の8% |
300万円超〜3,000万円以下 |
5%+9万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
3%+69万円 |
3億円超 |
2%+369万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
なお上記は遺産の範囲や相続分に争いがある場合の着手金であり、トラブルがなければ割合はもっと低くなるのが一般的です。
反対に見込まれる相続額や内容の複雑さ、トラブルの度合いによっては、高額になるケースもあります。
着手金をいくらにするかは事務所によって異なるため、契約前に必ず確認しておきましょう。
報酬金:経済的利益によって異なる
報酬金は、事案を解決したあとに、報酬として支払う費用です。
報酬金の額は、「弁護士に依頼した結果、実際に得られた」経済的利益の額に応じて決まります。
たとえば弁護士に依頼すれば1,000万円の経済的利益が得られると見込んで着手金を支払ったものの、実際には500万円しか経済的利益が得られないこともあるでしょう。
その場合、報酬金は1,000万円に対してではなく、500万円に対してかかるのが一般的です。
経済的利益に対する報酬金の割合についても、着手金と同様に、旧報酬基準を目安にするとよいでしょう。
経済的利益の額 |
報酬金(税抜) |
300万円以下 |
16% |
300万円超〜3,000万円以下 |
10%+18万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
6%+138万円 |
3億円超 |
4%+738万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
なお上記は遺産の範囲や相続分に争いがある場合の報酬金であり、トラブルがなければ割合は低く、トラブルの度合いによっては高くなることがあるのも着手金と同様です。
着手金・報酬金をいくらにするかは事務所によって異なります。契約前に必ず確認するようにしてください。
実費:依頼内容によって異なる
実費は依頼を遂行するときにかかる諸費用を指します。具体的には以下のようなものが含まれます。
- 印紙代
- 郵便切手代
- 記録謄写費用
- 保証金
- 鑑定料
- 交通費
実費がどの程度になるかは状況によって異なりますが、弁護士が遠方に移動する必要がなく、大きなトラブルがなければ、高額になるケースは少ないでしょう。
日当(出張がある場合):1日あたり1万円~2万円程度
遠方で開かれる遺産分割協議に弁護士をともなう場合や、遠方の弁護士の訪問相談を依頼する場合など、弁護士の出張が必要になるケースでは日当の支払いも生じます。
日当は弁護士事務所によって異なりますが、1日あたり1万円〜2万円が相場です。
なお日当には宿泊費や交通費は含まれないため、これらは別途実費の支払いが必要になります。
【手続き別】相続でかかる弁護士費用の相場
ここからは、相続の手続き別に、弁護士費用の相場を紹介していきます。
相続人調査・相続財産調査を依頼する場合:10万円~30万円程度
相続財産調査を弁護士に依頼する場合は10万円から30万円程度、相続人調査を弁護士に依頼する場合は20万円程度かかるのが一般的です。
相続が発生したときには、まずは相続財産を全て洗い出します。
そのうえで相続人全員で、誰が・どの財産を・どのくらい相続するのかを話し合う「遺産分割協議」をおこないます。
遺産分割協議を開くためには、被相続人の戸籍をさかのぼり、相続の権利がある人を抜け漏れなく洗い出さなければなりません。
あとから新たな相続人が見つかると、遺産分割協議で決めた内容は無効になってしまうためです。
遺産分割協議・遺産分割調停を依頼する場合:数十万円以上
遺産分割協議や遺産分割調停を依頼する場合は、得られた「経済的利益」に応じてかかる費用が異なります。
遺産分割協議や遺産分割調停にかかる弁護士費用を、具体的な例を挙げて紹介します。
遺産分割の代理交渉を弁護士に依頼し、600万円の利益を得た場合
遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼し、600万円の経済的利益を得たときの弁護士費用は、旧報酬基準に基づいた場合以下のように計算します。
なお経済的利益の額は法定相続分内で、金額について争いはないとし、経済的利益の額を時価相当額の3分の1で計算しました。
着手金 |
600万円×1/3×5%+9万円=19万円 |
報酬金 |
600万円×1/3×10%+18万円=38万円 |
弁護士費用合計 |
57万円+消費税(10%)=62.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
遺産分割の代理交渉を弁護士に依頼し、1,000万円の利益を得た場合
同じく遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼し、1,000万円の経済的利益を得た場合の弁護士費用を、旧報酬基準に基づいて計算してみましょう。
なお経済的利益の額は法定相続分を超えており、金額について争いがあるとします。
着手金 |
1,000万円×5%+9万円=59万円 |
報酬金 |
1,000万円×10%+18万円=118万円 |
弁護士費用合計 |
177万円+消費税(10%)=194.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
遺言書作成を依頼する場合:10万円~20万円程度
遺言書の依頼を弁護士に依頼する際の費用は、定型のものであれば10万円から20万円が相場です。
ただし遺言書の作成費用は、対象となる財産の額に応じて計算される場合もあります。
とくに複雑・特殊な事情があるケースでは、弁護士との話し合いで費用が決まることがほとんどです。
なお公正証書遺言を作成する場合は、別途3万円程度の費用がかかります。
遺言執行を依頼する場合:30万円以上
遺言の執行を弁護士に依頼する場合の費用は、相続した財産額や相続人の人数などによって異なります。
旧報酬基準における遺言執行の費用は以下のとおりです。
経済的利益の額 |
報酬金(税抜) |
300万円以下 |
30万円 |
300万円超〜3,000万円以下 |
2%+24万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
1%+54万円 |
3億円超 |
0.5%+204万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
相続放棄を依頼する場合:5万円~10万円程度
相続放棄にかかる弁護士費用の目安は、相続人1人あたり5万円から10万円程度が一般的です。
ほかに30分あたり5,000円程度の相談料や、相続放棄の申述書の作成費用として5,000円から1万円程度かかります。
なお相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヵ月を期限とするのが原則です。
財産調査の結果負の財産が多く、相続放棄を検討する場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
遺留分侵害額請求を依頼する場合:経済的利益による
「遺留分」とは、相続人に最低限保証される財産のことです。
たとえば長男、長女に相続の権利があるにもかかわらず、「長男に全ての遺産を相続させる」という遺言が残されていたとします。
そのような場合でも、長女は遺留分侵害額請求をすることで、最低限の財産の相続が可能です。
遺留分侵害額請求にかかる弁護士費用は、経済的利益の額に応じて計算されます。
たとえば2,000万円の遺留分侵害額請求を弁護士に依頼した場合、旧報酬基準に基づく弁護士費用は以下のようになります。
着手金 |
2,000万円×5%+9万円=109万円 |
報酬金 |
2,000万円×10%+18万円=218万円 |
弁護士費用合計 |
327万円+消費税(10%)=359.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
なお遺留分侵害額の請求権は、相続の開始を知ったときから1年以内に行使する必要があります。
相続で弁護士費用が高額になりやすいケース
以下のようなケースでは、相続にかかる弁護士費用が高額になる可能性があります。
- 相続財産が高額である
- 相続財産の種類や数が多い
- 相続人が多い
- 相続財産のなかに不動産がある
遺産分割や遺留分侵害額請求においては、経済的利益の額によって弁護士費用が変わるのが一般的です。
そのため相続財産が高額になればなるほど、弁護士費用は高くなる傾向があります。
また相続財産の種類や数が多いと手続きが複雑になり、さらに費用は高くなってしまうでしょう。
また、相続人が多い場合も、権利関係が複雑になりがちです。
遺産協議がまとまらずに調停や裁判になったような場合には、弁護士費用が高額になる可能性が高くなります。
相続財産のなかに不動産が含まれある場合も、弁護士費用に影響します。
不動産は評価額が高額になる傾向があるのに加え、現金や預貯金と違って簡単に分けられません。
そのためトラブルが大きくなりがちであるからです。
とくに、何代にもわたって相続登記がされておらず、相続人の把握ができないようなケースでは、手続きが煩雑になりさらに費用が膨らむ可能性があるでしょう。
相続で弁護士費用を支払うのは依頼者本人
相続でのもめ事を弁護士に解決してもらった場合、弁護士費用を揉めた相手に支払ってもらいたいと思う方もいるでしょう。
しかし弁護士費用を支払うのは、依頼した本人です。
たとえ遺産分割協議でもめ事がおこり、解決を求めて弁護士に解決を依頼した場合でも、「ほかの相続人に請求してください」ということはできません。
また費用を相続人全員で負担すると決め弁護士に依頼したあとに、「自分は払いたくない」という相続人が現れることもあります。
その場合でも、依頼した方が全額支払わなければなりません。
弁護士に依頼する場合は、費用を誰が支払うのかもよく考慮してから依頼するようにしましょう。
相続でかかる弁護士費用を安く抑える方法
相続における弁護費用は、遺産額やその他の状況で高額になる場合があります。
そのようなときに、費用を安く抑える方法はあるのでしょうか。
ここでは、相続にかかる弁護士費用をできるだえ抑える方法を紹介します。
初回相談無料の弁護士事務所で相談する
弁護士に相談するときには30分あたり5,000円程度の相談料がかかります。
しかし「初回相談料無料」としている弁護士事務所は少なくありません。
少しでも弁護士料を抑えたい場合は、初回相談料が無料となる弁護士事務所を利用しましょう。
なお、弁護士の無料相談には、回数制限のほか、時間制限が設けられているケースがほとんどです。
無料相談を利用する際は、事前に質問したいことや自分の希望をまとめておき、有効活用できるように準備しましょう。
見積もりを比較して安価な弁護士事務所に依頼する
相続にかかる弁護士費用を少しでも安く抑えるためには、複数の弁護士事務所で相見積もりをおこなうのがおすすめです。
弁護士が自由に設定できるようになったあとも、旧報酬基準を目安にしている事務所が多いものの、競争力を高めるために報酬額を抑えている弁護士も多くいます。
弁護士費用を抑えるためには、複数の弁護士に見積もりを依頼して、費用を比較するとよいでしょう。
ただし、「費用が安い」という点だけで弁護士を選ぶのは避けるのが無難です。
ケースによっては、担当弁護士との付き合いが数カ月から数年に及ぶ場合もあるので、自分との相性が良いかや、信頼できるかなどをよく確認しましょう。
相続で弁護士費用が支払えない場合の対処法
相続問題を解決するために弁護士に依頼したいけれども、弁護士費用が高くて支払いが難しい…というのはよくあるケースです。
ここでは、相続の弁護士費用を支払えないときの対処法を解説します。
着手金無料の弁護士事務所に依頼する
弁護士事務所のなかには、遺産分割や遺留分侵害額請求(請求側)などで着手金を無料としているところもあります。
ただし着手金無料となるのは法定相続分内で争いがない場合や、報酬金の回収が見込まれるケースに限るなど、条件が付く場合もあります。
着手金が無料になる条件などは、無料相談などでよく確認しましょう。
分割払い・後払いができないか相談する
弁護士に支払う費用のうち、着手金は契約時に一括で支払うのが原則です。
しかし弁護士が自由に料金を設定できるようになった今、報酬金と同時に払う後払いや分割払いを認めるのも自由です。
とくに報酬金については、分割払いが可能な事務所が多いようです。
無料相談の際に後払いや分割払いが可能か確認してみるとよいでしょう。
法テラスの民事法律扶助を利用する
弁護士費用の支払いに不安がある方は、法テラスの民事法律扶助を利用するのも方法のひとつです。
法テラスとは、相続を始め法的トラブルを抱えた方が相談できる場として国が設立した機関です。
法テラスには、面談や電話などで無料で弁護士に相談できる民事法律扶助制度があります。
ただし法テラスの民事法律扶助制度は、経済的に余裕がない方を対象としているため、利用するときには、原則として収入や資産が一定額以下であるなどの条件をクリアしなければなりません。
なお民事法律扶助制度では、ひとつの問題につき3回まで、1回あたり30分まで相談が可能です。
そのほかの法律トラブルに関して、法テラスで弁護士に依頼した際にかかる費用は、法テラスのホームページにある「弁護士費用・司法書士費用の目安」を確認してください。
相続で弁護士に依頼する際に確認すべきポイント
相続で弁護士に依頼を検討するときには、次の3点を確認しましょう。
料金体系は明確か
相続問題に対しての弁護士費用は、弁護士事務所によって異なります。
着手金はかかるのか、経済的利益に対する報酬金の割合はどのくらいなのか、日当はいくらなのかなど、料金体系がどうなっているかを明確にしておきましょう。
また今後調停や裁判などのトラブルが予想されるのか、その場合どのような追加費用がかかるのかもあらかじめ確認しておくと安心です。
相続問題に注力しているか
相続で弁護士に依頼したい場合は、相続問題を得意とし、注力している弁護士かを見極めることも重要です。
弁護士はそれぞれ得意分野があり、相続問題を多く扱っている人もいれば、離婚問題に強い人もいます。
相続を得意としている弁護士なら、手続きがスムーズで、トラブルへの迅速な対象も期待できます。
弁護士の得意分野を知りたいときには、年間の取り扱い件数のうち、相続が占める割合を聞いてみるとよいでしょう。
相続が得意であれば、必然的に相続が占める割合が多くなるものです。
なお、ベンナビ相続では相続問題に強い弁護士を多数掲載しています。
無料相談はもちろん、電話相談や休日・夜間相談に対応している事務所も多いので、弁護士探しで迷った方はぜひ利用してみてください。
自分と相性が合うか
弁護士選びで
相続が発生したときには、相続財産調査や相続人調査、遺産分割協議書の作成など相続問題解決に向けたさまざまな手続きが必要になります。
とくに相続財産や相続人が多く、相続人間でトラブルになると思われるケースでは、弁護士に手続きを依頼するとスムーズです。
とはいえ「弁護士は敷居が高い」「高額になるのでは」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、遺産分割手続を含む相続でかかる弁護士費用の相場を解説します。
相続手続きにかかる弁護士費用を抑える方法や、依頼に際して確認すべきポイントなどもあわせて紹介します。
相続でかかる弁護士費用の内訳と相場
弁護士費用は2004年4月1日に自由化されたため、基本的に個々の弁護士が自由に決められることになっています。
しかし、それまで日本弁護士連合会が定めていた報酬基準(以降:旧報酬基準)を参考に報酬を設定している弁護士が多いようです。
そのため今回は、旧報酬基準をもとに、相続弁護士費用の内訳と具体的な相場を紹介します。
相談料:30分ごとに5,000円程度
相談料とは、遺産相続について弁護士に相談する際にかかる費用です。
30分につき5,000円程度が相場で、相談した時間に応じて支払います。
初回は無料とする事務所も多いので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
着手金:20万円~
着手金とは、実際に弁護士と契約し、事案に着手してもらうときに支払う費用です。
着手金は一度払うと、事案が希望どおりに解決した・しないにかかわらず、返金はされません。
また着手金には「報酬金の内金」の意味合いはないため、報酬金に充当されることもありません。
相続問題においての着手金は、「経済的利益」の額に応じて決まるのが一般的です。
経済的利益とは、弁護士に依頼することで得られる依頼人の利益を指します。
たとえば遺産分割トラブルの解決を弁護士に依頼した結果、合計で1,000万円の遺産を得られると見込む場合、「1,000万円=経済的利益」とされるのが一般的です。
そしてその1,000万円に対し、あらかじめ取り決めた割合に応じた額を着手金として支払います。
ただし、分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額で計算するのが通常です。
旧報酬基準における経済的利益に対する着手金の割合は、以下のとおりです。
経済的利益の額 |
着手金(税抜) |
300万円以下 |
経済的利益の8% |
300万円超〜3,000万円以下 |
5%+9万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
3%+69万円 |
3億円超 |
2%+369万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
なお上記は遺産の範囲や相続分に争いがある場合の着手金であり、トラブルがなければ割合はもっと低くなるのが一般的です。
反対に見込まれる相続額や内容の複雑さ、トラブルの度合いによっては、高額になるケースもあります。
着手金をいくらにするかは事務所によって異なるため、契約前に必ず確認しておきましょう。
報酬金:経済的利益によって異なる
報酬金は、事案を解決したあとに、報酬として支払う費用です。
報酬金の額は、「弁護士に依頼した結果、実際に得られた」経済的利益の額に応じて決まります。
たとえば弁護士に依頼すれば1,000万円の経済的利益が得られると見込んで着手金を支払ったものの、実際には500万円しか経済的利益が得られないこともあるでしょう。
その場合、報酬金は1,000万円に対してではなく、500万円に対してかかるのが一般的です。
経済的利益に対する報酬金の割合についても、着手金と同様に、旧報酬基準を目安にするとよいでしょう。
経済的利益の額 |
報酬金(税抜) |
300万円以下 |
16% |
300万円超〜3,000万円以下 |
10%+18万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
6%+138万円 |
3億円超 |
4%+738万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
なお上記は遺産の範囲や相続分に争いがある場合の報酬金であり、トラブルがなければ割合は低く、トラブルの度合いによっては高くなることがあるのも着手金と同様です。
着手金・報酬金をいくらにするかは事務所によって異なります。契約前に必ず確認するようにしてください。
実費:依頼内容によって異なる
実費は依頼を遂行するときにかかる諸費用を指します。具体的には以下のようなものが含まれます。
- 印紙代
- 郵便切手代
- 記録謄写費用
- 保証金
- 鑑定料
- 交通費
実費がどの程度になるかは状況によって異なりますが、弁護士が遠方に移動する必要がなく、大きなトラブルがなければ、高額になるケースは少ないでしょう。
日当(出張がある場合):1日あたり1万円~2万円程度
遠方で開かれる遺産分割協議に弁護士をともなう場合や、遠方の弁護士の訪問相談を依頼する場合など、弁護士の出張が必要になるケースでは日当の支払いも生じます。
日当は弁護士事務所によって異なりますが、1日あたり1万円〜2万円が相場です。
なお日当には宿泊費や交通費は含まれないため、これらは別途実費の支払いが必要になります。
【手続き別】相続でかかる弁護士費用の相場
ここからは、相続の手続き別に、弁護士費用の相場を紹介していきます。
相続人調査・相続財産調査を依頼する場合:10万円~30万円程度
相続財産調査を弁護士に依頼する場合は10万円から30万円程度、相続人調査を弁護士に依頼する場合は20万円程度かかるのが一般的です。
相続が発生したときには、まずは相続財産を全て洗い出します。
そのうえで相続人全員で、誰が・どの財産を・どのくらい相続するのかを話し合う「遺産分割協議」をおこないます。
遺産分割協議を開くためには、被相続人の戸籍をさかのぼり、相続の権利がある人を抜け漏れなく洗い出さなければなりません。
あとから新たな相続人が見つかると、遺産分割協議で決めた内容は無効になってしまうためです。
遺産分割協議・遺産分割調停を依頼する場合:数十万円以上
遺産分割協議や遺産分割調停を依頼する場合は、得られた「経済的利益」に応じてかかる費用が異なります。
遺産分割協議や遺産分割調停にかかる弁護士費用を、具体的な例を挙げて紹介します。
遺産分割の代理交渉を弁護士に依頼し、600万円の利益を得た場合
遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼し、600万円の経済的利益を得たときの弁護士費用は、旧報酬基準に基づいた場合以下のように計算します。
なお経済的利益の額は法定相続分内で、金額について争いはないとし、経済的利益の額を時価相当額の3分の1で計算しました。
着手金 |
600万円×1/3×5%+9万円=19万円 |
報酬金 |
600万円×1/3×10%+18万円=38万円 |
弁護士費用合計 |
57万円+消費税(10%)=62.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
遺産分割の代理交渉を弁護士に依頼し、1,000万円の利益を得た場合
同じく遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼し、1,000万円の経済的利益を得た場合の弁護士費用を、旧報酬基準に基づいて計算してみましょう。
なお経済的利益の額は法定相続分を超えており、金額について争いがあるとします。
着手金 |
1,000万円×5%+9万円=59万円 |
報酬金 |
1,000万円×10%+18万円=118万円 |
弁護士費用合計 |
177万円+消費税(10%)=194.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
遺言書作成を依頼する場合:10万円~20万円程度
遺言書の依頼を弁護士に依頼する際の費用は、定型のものであれば10万円から20万円が相場です。
ただし遺言書の作成費用は、対象となる財産の額に応じて計算される場合もあります。
とくに複雑・特殊な事情があるケースでは、弁護士との話し合いで費用が決まることがほとんどです。
なお公正証書遺言を作成する場合は、別途3万円程度の費用がかかります。
遺言執行を依頼する場合:30万円以上
遺言の執行を弁護士に依頼する場合の費用は、相続した財産額や相続人の人数などによって異なります。
旧報酬基準における遺言執行の費用は以下のとおりです。
経済的利益の額 |
報酬金(税抜) |
300万円以下 |
30万円 |
300万円超〜3,000万円以下 |
2%+24万円 |
3,000万円超〜3億円以下 |
1%+54万円 |
3億円超 |
0.5%+204万円 |
【参考元】(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
相続放棄を依頼する場合:5万円~10万円程度
相続放棄にかかる弁護士費用の目安は、相続人1人あたり5万円から10万円程度が一般的です。
ほかに30分あたり5,000円程度の相談料や、相続放棄の申述書の作成費用として5,000円から1万円程度かかります。
なお相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヵ月を期限とするのが原則です。
財産調査の結果負の財産が多く、相続放棄を検討する場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
遺留分侵害額請求を依頼する場合:経済的利益による
「遺留分」とは、相続人に最低限保証される財産のことです。
たとえば長男、長女に相続の権利があるにもかかわらず、「長男に全ての遺産を相続させる」という遺言が残されていたとします。
そのような場合でも、長女は遺留分侵害額請求をすることで、最低限の財産の相続が可能です。
遺留分侵害額請求にかかる弁護士費用は、経済的利益の額に応じて計算されます。
たとえば2,000万円の遺留分侵害額請求を弁護士に依頼した場合、旧報酬基準に基づく弁護士費用は以下のようになります。
着手金 |
2,000万円×5%+9万円=109万円 |
報酬金 |
2,000万円×10%+18万円=218万円 |
弁護士費用合計 |
327万円+消費税(10%)=359.7万円 |
※ほかに事前相談料、実費、日当などがかかる場合があります。
なお遺留分侵害額の請求権は、相続の開始を知ったときから1年以内に行使する必要があります。
相続で弁護士費用が高額になりやすいケース
以下のようなケースでは、相続にかかる弁護士費用が高額になる可能性があります。
- 相続財産が高額である
- 相続財産の種類や数が多い
- 相続人が多い
- 相続財産のなかに不動産がある
遺産分割や遺留分侵害額請求においては、経済的利益の額によって弁護士費用が変わるのが一般的です。
そのため相続財産が高額になればなるほど、弁護士費用は高くなる傾向があります。
また相続財産の種類や数が多いと手続きが複雑になり、さらに費用は高くなってしまうでしょう。
また、相続人が多い場合も、権利関係が複雑になりがちです。
遺産協議がまとまらずに調停や裁判になったような場合には、弁護士費用が高額になる可能性が高くなります。
相続財産のなかに不動産が含まれある場合も、弁護士費用に影響します。
不動産は評価額が高額になる傾向があるのに加え、現金や預貯金と違って簡単に分けられません。
そのためトラブルが大きくなりがちであるからです。
とくに、何代にもわたって相続登記がされておらず、相続人の把握ができないようなケースでは、手続きが煩雑になりさらに費用が膨らむ可能性があるでしょう。
相続で弁護士費用を支払うのは依頼者本人
相続でのもめ事を弁護士に解決してもらった場合、弁護士費用を揉めた相手に支払ってもらいたいと思う方もいるでしょう。
しかし弁護士費用を支払うのは、依頼した本人です。
たとえ遺産分割協議でもめ事がおこり、解決を求めて弁護士に解決を依頼した場合でも、「ほかの相続人に請求してください」ということはできません。
また費用を相続人全員で負担すると決め弁護士に依頼したあとに、「自分は払いたくない」という相続人が現れることもあります。
その場合でも、依頼した方が全額支払わなければなりません。
弁護士に依頼する場合は、費用を誰が支払うのかもよく考慮してから依頼するようにしましょう。
相続でかかる弁護士費用を安く抑える方法
相続における弁護費用は、遺産額やその他の状況で高額になる場合があります。
そのようなときに、費用を安く抑える方法はあるのでしょうか。
ここでは、相続にかかる弁護士費用をできるだえ抑える方法を紹介します。
初回相談無料の弁護士事務所で相談する
弁護士に相談するときには30分あたり5,000円程度の相談料がかかります。
しかし「初回相談料無料」としている弁護士事務所は少なくありません。
少しでも弁護士料を抑えたい場合は、初回相談料が無料となる弁護士事務所を利用しましょう。
なお、弁護士の無料相談には、回数制限のほか、時間制限が設けられているケースがほとんどです。
無料相談を利用する際は、事前に質問したいことや自分の希望をまとめておき、有効活用できるように準備しましょう。
見積もりを比較して安価な弁護士事務所に依頼する
相続にかかる弁護士費用を少しでも安く抑えるためには、複数の弁護士事務所で相見積もりをおこなうのがおすすめです。
弁護士が自由に設定できるようになったあとも、旧報酬基準を目安にしている事務所が多いものの、競争力を高めるために報酬額を抑えている弁護士も多くいます。
弁護士費用を抑えるためには、複数の弁護士に見積もりを依頼して、費用を比較するとよいでしょう。
ただし、「費用が安い」という点だけで弁護士を選ぶのは避けるのが無難です。
ケースによっては、担当弁護士との付き合いが数カ月から数年に及ぶ場合もあるので、自分との相性が良いかや、信頼できるかなどをよく確認しましょう。
相続で弁護士費用が支払えない場合の対処法
相続問題を解決するために弁護士に依頼したいけれども、弁護士費用が高くて支払いが難しい…というのはよくあるケースです。
ここでは、相続の弁護士費用を支払えないときの対処法を解説します。
着手金無料の弁護士事務所に依頼する
弁護士事務所のなかには、遺産分割や遺留分侵害額請求(請求側)などで着手金を無料としているところもあります。
ただし着手金無料となるのは法定相続分内で争いがない場合や、報酬金の回収が見込まれるケースに限るなど、条件が付く場合もあります。
着手金が無料になる条件などは、無料相談などでよく確認しましょう。
分割払い・後払いができないか相談する
弁護士に支払う費用のうち、着手金は契約時に一括で支払うのが原則です。
しかし弁護士が自由に料金を設定できるようになった今、報酬金と同時に払う後払いや分割払いを認めるのも自由です。
とくに報酬金については、分割払いが可能な事務所が多いようです。
無料相談の際に後払いや分割払いが可能か確認してみるとよいでしょう。
法テラスの民事法律扶助を利用する
弁護士費用の支払いに不安がある方は、法テラスの民事法律扶助を利用するのも方法のひとつです。
法テラスとは、相続を始め法的トラブルを抱えた方が相談できる場として国が設立した機関です。
法テラスには、面談や電話などで無料で弁護士に相談できる民事法律扶助制度があります。
ただし法テラスの民事法律扶助制度は、経済的に余裕がない方を対象としているため、利用するときには、原則として収入や資産が一定額以下であるなどの条件をクリアしなければなりません。
なお民事法律扶助制度では、ひとつの問題につき3回まで、1回あたり30分まで相談が可能です。
そのほかの法律トラブルに関して、法テラスで弁護士に依頼した際にかかる費用は、法テラスのホームページにある「弁護士費用・司法書士費用の目安」を確認してください。
相続で弁護士に依頼する際に確認すべきポイント
相続で弁護士に依頼を検討するときには、次の3点を確認しましょう。
料金体系は明確か
相続問題に対しての弁護士費用は、弁護士事務所によって異なります。
着手金はかかるのか、経済的利益に対する報酬金の割合はどのくらいなのか、日当はいくらなのかなど、料金体系がどうなっているかを明確にしておきましょう。
また今後調停や裁判などのトラブルが予想されるのか、その場合どのような追加費用がかかるのかもあらかじめ確認しておくと安心です。
相続問題に注力しているか
相続で弁護士に依頼したい場合は、相続問題を得意とし、注力している弁護士かを見極めることも重要です。
弁護士はそれぞれ得意分野があり、相続問題を多く扱っている人もいれば、離婚問題に強い人もいます。
相続を得意としている弁護士なら、手続きがスムーズで、トラブルへの迅速な対象も期待できます。
弁護士の得意分野を知りたいときには、年間の取り扱い件数のうち、相続が占める割合を聞いてみるとよいでしょう。
相続が得意であれば、必然的に相続が占める割合が多くなるものです。
なお、ベンナビ相続では相続問題に強い弁護士を多数掲載しています。
無料相談はもちろん、電話相談や休日・夜間相談に対応している事務所も多いので、弁護士探しで迷った方はぜひ利用してみてください。
自分と相性が合うか
弁護士選びでもっとも重要なのは、自分との相性です。相続トラブルは、弁護士と二人三脚で解決に向けて進むものであるためです。
たとえ相続を得意としていて、安い費用で依頼できる弁護士であっても、話をよく聞いてくれなかったり、態度が高圧的だったりする弁護士とは信頼関係を結べません。
弁護士は、費用よりも自分との相性の良さを重視して選びましょう。
さいごに|相続での弁護士費用が不安な方は無料相談がおすすめ
相続が発生すると、相続財産や相続人の調査から遺産分割協議まで、多くの手続きが必要になり手間と時間がかかります。
相続財産や相続人が多い場合は、相続人間でトラブルになることもあるでしょう。
そのようなとき、相続問題に注力している弁護士なら、問題に対処しながらスムーズに進められます。
弁護士費用が不安な方は、まずは無料相談できる弁護士事務所に相談してみるとよいでしょう。
弁護士探しで困っている場合は、ベンナビ相続で無料相談が可能な弁護士を多数掲載しているので、ぜひ利用してみてください。
もっとも重要なのは、自分との相性です。相続トラブルは、弁護士と二人三脚で解決に向けて進むものであるためです。
たとえ相続を得意としていて、安い費用で依頼できる弁護士であっても、話をよく聞いてくれなかったり、態度が高圧的だったりする弁護士とは信頼関係を結べません。
弁護士は、費用よりも自分との相性の良さを重視して選びましょう。
さいごに|相続での弁護士費用が不安な方は無料相談がおすすめ
相続が発生すると、相続財産や相続人の調査から遺産分割協議まで、多くの手続きが必要になり手間と時間がかかります。
相続財産や相続人が多い場合は、相続人間でトラブルになることもあるでしょう。
そのようなとき、相続問題に注力している弁護士なら、問題に対処しながらスムーズに進められます。
弁護士費用が不安な方は、まずは無料相談できる弁護士事務所に相談してみるとよいでしょう。
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