相続財産管理人とは|誰がなる?費用や選任申立手続きの流れを解説

相続手続き

相続財産清算人とは、相続人の存在が不明確な場合や相続人全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所によって選任される人のことを指します。

相続財産清算人の役割は、被相続人の債権者への債務支払いや残った財産の国庫帰属など、相続財産の清算をおこなうこととなっています。

相続放棄後にも管理義務が残るケースでは、相続財産清算人の選任は不可欠です。

本記事では、相続財産清算人の選任方法をはじめ、選任が必要になるケースや費用や手続きの流れについてなど、関連する情報を詳しく解説します。

相続の状況によっては相続財産清算人が必要になるため、これから相続に関わる方は参考にしてください。

相続財産清算人(相続財産管理人)とは?誰がなる?

相続財産清算人とは、相続人の代わりに故人の財産を管理し、清算するという重要な役割を担うポジションの人です。

以前は「相続財産管理人」という名称でしたが、2023年の民法改正によって「相続財産清算人」へと変更されました。

相続財産清算人が必要になるのは、相続人が存在しないケースや相続人全員が相続放棄をしたケースです。

選任された相続財産清算人は、法律に基づいて債権者への支払いをはじめ、受遺者への財産分配、特別縁故者への財産分与などの手続きをおこないます。

相続財産清算人の役割

相続財産清算人の役割は、相続財産や相続人を調査し、借金のような債務があった場合は債権者に支払いをし、清算をおこなうことです。

特別縁故者がいるケースでは財産分与の申し立てをおこない、相続財産を引き継ぐ者がいなければ国庫に帰属させて役割は完了します。

相続財産清算人とは他人の財産を管理するという責任ある重要な役割であり、相続財産を使用した清算ができるからといって自分勝手に財産を扱うことはできません。

相続財産清算人に選任される人物

相続財産清算人は利害関係人や検察官の申し立てに基づいて、家庭裁判所によっての選任されます。

相続財産清算人は、申し立てをおこなった当事者が候補者を推薦することもできます。

ただし、法的な知識が必要になることから、法律の専門家である弁護士や司法書士などが選ばれることが多く、家庭裁判所の審査によって必ずしも候補者が選任されるわけではないため、注意が必要です。

相続人や包括受遺者がいる場合は選任しない

相続財産清算人の選任は、あくまで財産を引き継ぐ相続人がいない場合におこなわれ、相続人が存在するケースではおこなわれないのが一般的です。

相続人がいるのであれば、相続人が故人の財産を管理し、清算の責任を負います。そのため、相続人がいる状況であれば相続財産清算人を選任する必要はありません。

相続人は、相続した故人の財産を自らの手によって適切に管理することになります。

相続人の役割

相続人がいるケースでは、故人の財産を共同で管理して相続に関する決定をおこなわなければなりません。

相続人が複数人いる場合は、協力して以下のような作業をおこなうことになります。

  • 財産の分配
  • 債務の清算
  • 必要に応じた財産の売却

相続財産清算人の選任が必要になるのは、相続人がいない、または相続人全員が相続を放棄したケース等です。

相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要になるケース

相続財産清算人の選任は、相続において特定の状況下で必要とされる手続きです。

通常は故人が残した債権者への支払いや財産の清算は相続人がおこないますが、相続人が不在もしくは全員が相続を放棄していると相続財産清算人の選任が必要になります。

以下では、相続財産清算人の選任が必要になる具体的な例について解説します。

法定相続人がいない

被相続人に法定相続人が1人もいない場合は、故人の財産を管理し、適切に処理するために相続財産清算人が必要です。

被相続人が亡くなった際に誰が法定相続人になるのかは民法によって定められており、以下の人物が法定相続人になります。

常に相続人 配偶者
第1順位 子や孫などの「直系卑属」
第2順位 父母や祖父母などの「直系尊属」
第3順位 兄弟姉妹

多くの場合、配偶者と第1順位の子どもが法定相続人になりますが、死亡や相続放棄によって第1順位が不在だったときは第2順位、第2順位が不在だったときは第3順位が法定相続人となります。

相続財産清算人が必要になる「法定相続人が不在」とは、上記にあたる人物が1人もいない状況です。

相続人全員が相続放棄をした

相続人全員が相続を放棄したケースでは、相続放棄した相続人はもともと相続人ではなかったものとして扱われます。

そのため、相続人が存在しなかった場合と同様に相続財産清算人の選任が必要です。

相続人全員が相続放棄した場合、故人の財産を管理・清算する人がいなくなるため、家庭裁判所は相続財産清算人を選任します。

相続放棄は相続人が故人の財産を一切受け取らないことを意味し、その結果として相続財産を管理する者が不在となります。

相続放棄をする理由として挙げられるのは、被相続人の遺産としてプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産のほうが大きい場合などです。

相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申し立ての流れ

被相続人に法定相続人が存在しないケースや、相続人全員が相続放棄をしたケースでは、相続財産清算人を選任しなければなりません。

以下では、故人の財産を適切に管理し、清算するための相続財産清算人を選任するための流れを詳しく説明します。

選任申し立ては、利害関係人か検察官がおこなう

相続財産清算人の選任申し立ては、利害関係人もしくは検察官によっておこなわれます。「利害関係人」にあたるのは、以下の人物です。

  • 被相続人の債権者
  • 特定遺贈を受けた者
  • 特別縁故者など

選任申し立てをおこなうことで、相続する人物がいない状況であっても被相続人の財産を管理し、清算できるようになります。

選任申し立てに必要な書類・費用を用意する

相続財産清算人の選任申し立てには、被相続人の戸籍謄本や財産を証する資料など、多くの書類が必要です。

また、収入印紙・郵便切手・官報公告料などの費用が発生することも把握しておきましょう。

以下では、選任申し立ての際に必要になる書類と費用について解説します。

必要書類

必要書類 概要
申立書 相続財産清算人の選任を求める正式な文書です。申立人の情報や被相続人の情報、相続財産の概要などを含みます。
被相続人の戸籍謄本 被相続人の出生から死亡までの戸籍の記録です。相続人の有無や身分関係の確認に使用します。
被相続人の父母の戸籍謄本 被相続人の父母に関する出生から死亡までの戸籍の記録です。相続人の特定に使用します。
被相続人の子(及びその代襲者)の戸籍謄本 被相続人の子やその代襲者に関する戸籍の記録です。相続権の確認に必要です。
被相続人の直系尊属の戸籍謄本 祖父母など被相続人の直系尊属の戸籍の記録です。相続関係の明確化に使用します。
被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本 被相続人の兄弟姉妹に関する戸籍の記録です。代襲相続などの確認に使用します。
被相続人の住民票除票または戸籍附票 被相続人の最終住所や家族構成などの情報を含む資料となります。
財産を証する資料 被相続人の財産の状況を明らかにするために必要な書類で以下のものが含まれます。

・不動産登記事項証明書

・固定資産評価証明書

・通帳写し

・残高証明書等

利害関係を証する資料 申立人が利害関係人であることを示す書類です。申立人による申し立ての正当性を示すために必要です。
相続財産清算人の候補者の住民票または戸籍附票 提案される相続財産清算人の身分を証明する書類です。選任される人物の適格性を裁判所が判断するために必要です。

必要費用

収入印紙 800円

選任申し立てに必要な手数料です。

連絡用の郵便切手 1000円~2000円

選任申し立てに関する書類の郵送に使用します。金額は家庭裁判所によって異なります。

戸籍謄本取得費用 1通あたり450円又は750円

戸籍謄本の取得に必要な手数料です。

官報公告料 5075円

相続財産清算人の選任に関する公告を官報に掲載するための費用です。

予納金 10~100万円程度

相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用や報酬などに不足が出る可能性がある場合、申立人による予納金の納付が求められます。

裁判所に必要書類を提出する

必要な書類を揃えた後、申立人は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に書類を提出します。

申立書の書式と記載例は裁判所のWebサイトで確認できるため、記載例を見ながら漏れがないよう適切に記入することが重要です。

申立書には、被相続人の戸籍謄本や財産を証明する資料など、詳細な情報が含まれます。

申し立てが正確におこなわれることで、裁判所は適切な審理をおこなうことができます。

裁判所によって審理・選任がおこなわれる

提出された書類に基づいて、家庭裁判所が相続財産清算人の選任に関する審理をおこないます。

この審理では、被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を清算するのにもっとも適任と認められる人が選ばれます。

ただし、法的な知識が必要になるため、弁護士や司法書士などの専門職が選任されることが一般的です。

相続財産管理に支払う報酬|予納金

相続財産清算人を選任する際には、書類の取得費用や収入印紙代など、さまざまな費用がかかります。

必要な費用のなかで忘れてはいけないのが、「予納金」です。以下では、相続財産清算人の選任に伴って発生する予納金について詳しく説明します。

予納金は誰が払う?

予納金とは、相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用のことであり、相続財産清算人に対する報酬も含まれます。

なお、予納金を支払う義務があるのは申立人です。

相続財産の内容によっては予納金が不足する可能性があるため、申立人は相続財産清算人が円滑に事務をおこなえるように、相当額を予納金として納付することが求められます。

予納金を払って損するケースもある

予納金の支払いについては、相続財産の価値に比べて不釣り合いに高額であると判断した場合、申し立てをおこなわないという選択肢もあります。

特に、相続財産が少なかったり負債が多かったりするケースでは、予納金の支払いが経済的に不利益となる可能性があるためです。

予納金の支払いに関しては、相続財産清算人の選任申し立てをおこなうことによる利益とコストを比較して慎重に検討することが重要です。

予納金の支払いが相続財産の価値を上回る場合は、申し立てをおこなわないことで不必要な出費を避けられます。

相続財産清算人(相続財産管理人)の権限

相続財産清算人の役割は、故人の財産を管理し清算することです。

この役割を全うして相続財産の適切な管理と分配を確実にするために、相続財産清算人には特定の権限が付与されています。

以下では、相続財産清算人の主な権限について詳しく説明します。

保存行為・管理行為

相続財産清算人による財産の保存行為や管理行為とは、被相続人の財産を無駄にしないために維持・利用することを指します。

財産の保存行為と管理行為に関しては、相続財産清算人は家庭裁判所の許可を受けることなくおこなえます。

具体的な保存行為・管理行為の例としては、以下のものが挙げられます。

  • 不動産の相続登記
  • 不動産の修繕工事
  • 有価証券の保管
  • 銀行口座の管理

なお、基本的に財産の状態を変えることなく維持・利用することが目的となるため、財産の売却や処分に関してはといった行為は、保存行為・管理行為ではなく「処分行為」に当たります。

処分行為が認められるケースもある

相続財産の処分行為とは、相続財産を売却したり処分したりするような行為を指し、基本的には相続財産清算人には認められていません。

しかし、特定の状況下であれば財産の処分行為をおこなうことも可能です。処分行為の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 不動産の売却
  • 有価証券の換金
  • 家電家具の処分
  • 定期預金の満期前の解約

ただし、処分行為には家庭裁判所の許可が必要であり、相続財産の清算や債権者への支払いを目的とする場合に限られます。

相続財産清算人が財産を処分する際には、その行為によって相続財産の価値が高まり、関係者の利益になるよう慎重に検討することが重要です。

さいごに

本記事では、相続財産清算人の概要をはじめ、具体的な選任方法や手続きの流れ、相続財産清算人の権限についてなどを解説しました。

相続財産清算人(相続財産管理人)は、相続人が存在しないか全員が相続放棄した場合に、故人の財産を管理・清算するために家庭裁判所によって選任される人です。

相続財産清算人は、故人の債権者への支払いや財産の清算をおこない、最終的に残った財産を国庫に帰属させる責任を負います。

現在、相続放棄を検討している場合などは、相続放棄後の財産管理のために相続財産清算人を選任することの必要性について考慮することも重要です。

相続財産清算人の選任に関する詳細な情報や費用については、弁護士・司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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